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東京地方裁判所 昭和51年(特わ)2298号 判決 1977年3月31日

本籍

東京都新宿区筑土八幡町三〇番地

住居

同都港区高輪二丁目一二番五六号

高輪ヒルズ二〇三号

会社役員

水谷文一

大正二年三月八日生

右の者に対する所得税法違反被告事件につき当裁判所は検察官小林幹男出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一〇月及び罰金一、五〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判の確定した日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は営利を目的とした有価証券の継続的売買などにより多額の利益を得ていたものであるが、自己の所得税を免れようと企て、多数の証券会社に多数の仮名口座を設けて有価証券の売買を行うなどの方法により所得を秘匿したうえ、

第一  昭和四八年分の実際所得金額が七、二三四万四、〇二〇円(別表(一)昭和四八年分ほ脱所得の内容参照)であつたのにかかわらず、同四九年三月一五日の納付期限までに東京都港区西麻布三丁目三番五号所在の所轄麻布税務署の署長に対し、所得税確定申告書を提出しないで右期限を徒過し、もつて不正の行為により同四八年分の右実際所得金額に対する所得税額四、一二〇万三、六〇〇円(別表(三)税額計算書参照)を免れ

第二  昭和四九年分の実際所得金額が八、一三五万七、八〇三円(別表(二)昭和四九年分ほ脱所得の内容参照)あつたのにかかわらず、同五〇年三月一五日の納付期限までに前記税務署の署長に対し、所得税確定申告書を提出しないで右期限を徒過し、もつて不正の行為により同四九年分の右実際所得金額に対する所得税額四、六九九万七〇〇円(別表(三)税額計算書参照)を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示事実全部につき

一、被告人の当公判廷における供述

一、被告人の検察官に対する供述調書二通(いずれも昭和五一年七月一六日付)

一、被告人の大蔵事務官に対する質問てん末書二通

一、北条牛夫、高源典昭の検察官に対する各供述調書

判示第一の事実につき

一、被告人の検察官に対する供述調書三通(同年七月一三日、同月一四日、八月四日付)

一、土岐広の検察官に対する供述調書謄本(同年五月一日付)

一、曽根啓介の検察官に対する供述調書謄本四通(同年五月八日、同月一四日、七月一五日、八月二七日付)

一、根津良蔵の検察官に対する供述調書

一、松尾頼人の大蔵事務官に対する質問てん末書

一、大津信夫、保坂忍、杉浦正安、後藤竹作成の各申述書

一、中村健二郎作成の株式運用(五〇〇万株口)謝礼金収入調査書、株式運用(五八万株口)謝礼金収入調査書、株式売買損益調査書(四八年分)及び株式売買に関する一般管理費調査書(同年七月二八日付のうち三枚のもの)

一、千田正美作成の査察官調査書

一、山口久男作成の配当収入調査書(昭和四八年分)

一、押収してある四八/四~五、五八万株分と題するフアイル一綴(昭和五二年押第三七五号の三)

判示第二の事実につき

一、被告人の検察官に対する供述調書三通(昭和五一年七月六日、七月一〇日、七月二八日、二九日付)

一、土岐広の検察官に対する供述調書謄本四通(同年五月一九日、七月二日、同月四日、同月一一日付)

一、松永寿の検察官に対する供述調書謄本(同年九月三日付)

一、曾根啓介の検察官に対する供述調書謄本(同年七月一二日付)

一、大刀川恒夫の検察官に対する供述調書謄本二通(同年八月九日、九月二六日付)

一、河合靖之の検察官に対する供述調書謄本

一、中村健二郎作成の株式運用益精算調査書、株式売買損益調査書(四九年分)及び株式売買に関する一般管理費調査書(同年七月二八日付のうち五枚のもの)

一、山口久男作成の配当収入調査書(昭和四九年分)

一、押収してある株式売買明細帳一綴(昭和五二年押第三七五号の一)、元帳一冊(同押号の二)

(法令の適用)

被告人の判示各所為は、いずれも所得税法二三八条一項に該当するが、いずれの罪についても所定刑中懲役刑と罰金刑を併科することとし(罰金刑については、いずれもその免れた所得税の額が五〇〇万円をこえるから、情状により同条二項を適用)、以上は刑法四五条前段の併合罪なので懲役刑については同法四七条本文、一〇条により重い判示第二の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条二項により判示第一、第二の各罪所定の罰金額を合算し、その刑期及び金額の範囲内で被告人を懲役一〇月及び罰金一、五〇〇万円に処し、右の罰金を完納することができないときは、同法一八条により金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から二年間右懲役刑の執行を猶予することとする。

よつて主文のとおり判決する。

(裁判官 中村勲 裁判官 大谷正治 裁判長裁判官高田義文は退官のため署名押印できない。裁判官 中村勲)

別表(一)

昭和48年分ほ脱所得の内容

別表(二)

昭和49年分ほ脱所得の内容

別表(三)

税額計算書

(昭和48年)

(昭和49年)

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